女は女である

雑記帳

夏休み

 夏休み。甘美なひびき。

 電車内の金麦の広告、ありがちだけど、だれも経験したことがない、でもみんなが経験したことがあるように錯覚しちゃいそうな、夏、の憧憬をわたしたちにいだかせる。となりまちのはなびのおと、なんて傑作だと思うの。

 片瀬江ノ島行きの小田急線、屈託のないいたずらそうな、いかにも男の人が好みそうな檀れいがうかべる笑みと、そのキャッチコピーが、疲れた私の目にとまる。学校へ行くときはいっぱいの満員電車で気がつかなかったのに。帰りの電車、疲れきって、セットした髪型も、洋服も、お化粧も無惨に崩れてしまったわたしは、夏なのに汗もかかずさらさらの髪と、完璧な笑顔を永遠に崩さない、さわやかなピンナップ・ガール壇れいをいつもにらむように見上げてるよ。

 

 夏休み。

 蝉が鳴き声。むずかしいことなんか考えられないくらいあつくて、ただ体の、水を欲するつよいつよい欲求にこころの全てが支配される夏。じめじめとして暑いのに、人の肌に無性に触れたくなっちゃう夏。肌の表面がすべて粘膜みたいになって、外と内との境目が消え去ってしまう夏。いきおいでこぼれた冷たい三ツ矢サイダーが、渇いて肌にべとつく夏。ワンピースの中を風が通って、このうえなく涼しさを感じる夏。理性が飛んでしまうような、絶対に後悔をするような冒険をしたくなる夏。

 あついのは大きらいだけど、夏はきらいじゃない。

 壇れいを睨みつけた後、電車を下北沢駅で降りた私は、ピンクのネイルと、ビビッドオレンジのリップを買いました。

 

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